INTERVIEW

#3 Social Live Business ロールモデルのない世界に挑む、全員がプロダクトマネージャーの役割を担うチーム

ただモノやサービスをつくる時代は終わった。心震わす感動体験を生み出す。それこそが今あらゆる領域で、支持される必要条件となっているからだ。

そんな視座の高いものづくりを実現する役割がプロダクトマネージャーである。DeNAで活躍する彼らは、日々どんな仕事をしているのか――。

ソーシャルLIVEサービス「Pococha(ポコチャ)」のプロダクトマネージャー、水田大輔と、ソーシャルライブ事業部 事業部長の住吉政一郎に聞いた。

3人のチームが50人になった

――「Pococha」をローンチされたのが2017年。今やこの領域でのスマホサービスとしては並み居る競合の中でも、1位2位を争うライバー(※ライブ配信者)数を誇る人気サービスとなっています。

水田ありがたいことに多くのライバーさん、リスナーさんに支えていただいています。

リリース当初より、規模感としての数よりも、コミュニティの質と熱量を最優先で追求してきました。ここにきて、熱量を伴うスケールが起き始めたという認識です。

――この2年半でライバーもリスナーもどんどん増えてきたと思うのですが、「Pococha」のチームそのものも相当増えたのでは?

住吉そうですね。最初はこのサービスを企画し立ち上げた水田さんと、デザイナー、エンジニア一人ずつの3名のチームだったのが、今は50名を超えるほどになりました。

――立ち上げ時から、水田さんがプロダクトマネージャーの役割を?

水田プロダクトの価値を高めるために、いろんな機能や施策を考え、意思決定をするという意味ではそうなります。ただ……僕らのチームはあまり「プロダクトマネージャーはこの人」という組織設計ではないんですよ。

住吉そう。たとえばプロダクトの設計や事業戦略は「Pococha」の生みの親である水田さんが中心に手がけている。僕は組織的なマネジメントや事業構造的なところをみていますが、やはり単純にそれだけやっているわけでもなく、プロダクトマネージャーのような意識で、プロダクトとユーザーのために何かができるかと考えていろいろやっているし…...。

水田いわば50人いる全員がプロダクトマネージャーのような意識で、プロダクトに責任をもって仕事している。もっというと、各々の役割を「越境」していろんな決断をしている感じなんです。

そんな状況があったのですが、今年度からプロダクトマネージャーとしての役割をこれまで以上に意識することにしました。

きっかけは、いわば危機感から、ですね。

自分の領域を超えて、プロダクトのために――

――危機感というのは?

水田サービスが拡大するとともにチームも急拡大して、意思疎通が前より難しくなってきたんです。

住吉20人くらいの規模の頃までは、僕らが目指す地点や、届けたい価値や、もっと根本的なフィロソフィーみたいなものまでが、黙っていても共有できていた。

たとえば水田さんはDeNAに来る前からクローズドなSNSを自ら立ち上げていた人。コミュニティサービスをゼロから作り上げた直後にソーシャルライブへと舵をきったわけで、「これからはソーシャルライブコミュニティだ」ともう肌感覚での答えがあった。チームもそれを共有していたからこそ「言わなくてもわかる」「何をすべきか見える」という暗黙知に支えられてチームがドリブンしていたわけです。

――黙っていてもプロダクトのことを一人ひとりが考えて動く、というチームだったのが、拡大してそうは動けなくなってきた、と。

住吉ええ。そもそもソーシャルライブは、これまで世の中になかった新しい領域で、この分野のスペシャリストというものが存在しない。手本となるロールモデルがない中で、暗中模索でとにかく何から何まで自分たちでやるしかないわけです。

プロダクトマネージャーにしろ何にしろ、役割を明確に決めてそれにともなって動くというのではなく、それこそユーザーとマーケットと業界の未来を見据えながら、何から何まで一人ひとりが自律的に動くしかない。

水田ただ同じ動き方を、何もせずともあとから入ってきたメンバーに求めるのはきびしいし、さすがにしんどい。でも、役割ごとにチームにして、効率よくフロー化した業務に切り分けていくかというと、まだそのフェーズじゃないなと。

じゃあどうするか、と考えたときに出た答えが、一人ひとりが自分の領域を「越境」することだったわけです。

――「越境」というのは、たとえばiOSのエンジニアだけど、AndroidもWebも目配せするようなイメージですか?

住吉それもありますが、もっと幅広ですね。「エンジニアだけどユーザーさんと触れ合う」「Biz devだけどブランディングも考える」ような。

水田ソーシャルライブという事業のバリューチェーンが思った以上に広いことも「越境せざるを得ない」理由かなと感じています。プラットフォーム上にライバーさんもいれば、リスナーの方もいる。当然、BtoCの事業ではあるけれど、そこにライバーのマネジメント事務所なども出てきて、BtoB的な側面もある。さらにまだまったく完成形がみえないマーケットで、これからどう広がっていくかもわかりませんからね。

住吉役割に縛られず、局面局面でプロダクトがどうあるべきかを自ら考え、判断して動く。いわゆるプロダクトマネージャー的な思考を、一人ひとりがせざるを得ない。この環境変化の激しい中では、こうした越境できる人材が揃ったチームになることがベスト。チームビルディングとしても、そうせぜるを得ないという結論になったわけです。

――なるほど。ただ自然に越境して、自律的に動く。全員にプロダクトマネージャー的な思考と行動を求めるのは、簡単ではないですよね。

水田そうですね。ただ「越境」を求めるチームビルディングで最も大切なのは、チームメンバーそれぞれが「ちゃんとユーザーの顔が見えている」ことなんですね。自律的に判断するにしても、最後はユーザーの方々にとってどうかという意識が常になければ、おかしな判断になる。

住吉僕らのチームはずっと、ユーザーとふれあいながら成長してきており、それが重要だと思っています。ライバーやリスナーがリアルに集うイベントがあり、そこにはチームのメンバーがエンジニアもデザイナーも持ち回りで参加している。自然とユーザーとのエンゲージメントが高まるし、「ユーザーのために何ができるか」という気持ちが根付いてくる。

水田この間のイベントでは「最近、Androidのエンジニアばかり来ますね」なんて声をかけられたりしましたしね(笑)。いずれにしても、プロダクトマネージャーに不可欠な素養が全員にある。ユーザーとの距離の近さで担保されている自信があります。

――むしろプロダクトマネージャーの本質に近いカタチなのかもしれないですね。

住吉2ヶ月くらいかけてたたき台をつくって、それを一人ひとりとミーティングを重ねて落とし込んでいく作業をした。結果として、全員が違う行動目標になった。一人ひとりの腑に落ちた証左だと思いますね。

Pocochaチームが考える
「プロダクトマネージャー」とは

――とてもよくわかったのですが、「Pococha」チームに関しては、いわゆる役職としてのプロダクトマネージャーを求めている感じではないですね。

住吉そうですね。役割をもとめるのではなくて「事業をやりたい!」という動機づけの途中にプロダクトマネージャーのような視点で動かざるを得ない。業界を創りたい。開拓したい! というマインドの人を求めています。

――プロダクトマネージャーという役割って、それくらい多彩なのかもしれないですね。とくにDeNAにおいてはプロダクトのフェーズやスタイルによって、それくらい幅広だと。

水田そうですね。いずれにしても「Pococha」チームは越境し続けられる人を求めています。今いる場所で、今やっている仕事が狭苦しいと感じている人がいるなら、大きくて、先が見えないけれど、最高にワクワクするやたらと広い舞台がここにはある。そういう「場所でチャレンジしたい!」「開拓したい」という人に、本当におすすめですね。ぜひ!

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